幸せの契約

涙か止まらない

嗚咽と一緒に
思い出した記憶が烙印を熱くする



ふわっ…



その時
肌触りのいいウールのジャケットが震える肩に

優しく乗った


「鈴様…。」


聞こえるのは
何よりも優しい

暖かな

犬居さんの声



顔をあげると
犬居さんが優しく微笑んだ


そして
そっと…私を抱き寄せる温かな腕



「あなたは1人ではありません。

私が傍にいます。

片時も離れることなく、あなたをお守りします。」



言葉が
深く暗い闇に落ちた心に染みてくる



温もりが
忌まわしい熱を納めてくれる




「犬居さん…?」


抱き締めた腕が緩む
私はそって犬居さんの肩を押して身を離した


犬居さんは微笑んだまた
私を立たせてくれる


「ドレスは別なものに変えましょう。
鈴様の雪のように美しい素肌を披露するのはもったいない。」



そして
背中の隠れる
露出の少ないコバルトブルーのドレスを持って私に渡した



「終わりましたらお呼びください。美容師が待っておりますので。」



部屋を出ていく
犬居さん