バンッ!!

テーブルに両手をついて蔵之助さんが頭を下げた


カップから飛び出した紅茶がクロスを赤く染める


「許してくれ!!
あの時、私が鈴ちゃんを手放したりしなければ…

君はあんな辛い経験をせずに済んだ。
悲しい思いも、苦しい思いもせずに済んだかもしれないのにっ…。

本当にすまなかった。」



蔵之助さんの言葉に涙が滲んでいた


私はそっと蔵之助さんの横に座り肩に手を置く


「頭を…あげ…てください。

お父さんとお母さんを支えてくれてありがとうございました。

二人は蔵之助さんがいたから幸せになれたし、私も生まれることができました。
私の過去は消すことは出来ないけど、蔵之助さんが私に今の生活と屋敷の人たちを、家族を与えてくれました。

私は蔵之助さんに感謝しています。どんな言葉にしても足りないくらい、『ありがとう』で一杯です。


だから
頭をあげてください。
蔵之助さんは何も悪くない。」



ゆっくりと蔵之助さんと視線が合う


「鈴ちゃんっ…。」


優しい腕に包まれた

耳元で蔵之助さんがすすり泣く音が聞こえる


「二人の事を話していただいて、ありがとうございました。」


泣きながら私は精一杯大きな声で言った