「私っ…!
私はあの人たちに虐待を受けてました。

中学校入学と同時にあの人たちの家に引き取られました。最初は優しくて、大切にしてくれた。

でも
高校生になった頃から、経営する会社が上手く行かなくなって…そのストレスを私に発散するようになった…。

目があっただけで殴られて、決まって最後にはタバコを背中に押し付けられた。
“ゴミ”“クズ”“いらない子”様々な言葉と一緒に何度も何度も押し付けられて…

挙げ句の果てには…牧野に体を開かれた…。」


溢れる涙
流れる事を止めようとはしなかった

何度も声が詰まったけど
嗚咽混じりでも話したかった



あなたに


犬居さんに聞いて欲しかった



「私はいらない子だ…ってずっと思って一人で生きてきました。
だから、この屋敷に住んで使用人のみんなが家族みたいで…とても…とても幸せだったのに…。

消せないんです。
あの人たちにされた行為を身体が心がハッキリと記憶していて…っつ…」

ギュッ…!

犬居さんが振り返ると同時に私を抱き締めた

「もう、もう十分です。
よく話してくださいました。お一人でずっと抱えていて、さぞ辛かったでしょう?

もう隠さないで下さい。私が全部受け止めます。
私たちが鈴様の家族になります。」

力強い腕の温もり

冷えきった心に熱が灯る

だけど
背中の傷が悲しく痛む


「私は汚れてるんです…。
こんな体じゃ
誰とも結婚なんて出来ない…。大和さんとの婚約は破棄させてもらうように蔵之助さんに伝えるつもりです。

大学を卒業したら、ここも出ていきます。」