「バレました?秘密ですよ!」
声の方へ振り返ると、加藤さんが井口に向かって、シーっと指を一本口に当てて立っている。
いつの間に後ろに居たんだ?って何、井口も頷いてんだよ!
「井口、あのなぁ…」
「課長!いいんです。内緒にしますから、でもミクさんみたいな可愛い人が居るのに…。」
そう言って言葉を濁す井口。なんか話が変になって来たぞ…。
「だから、違うって言ってるだろ!」
俺が必死で弁明するせいか、井口の冷ややかな目線が痛い。そして黙って俺に指を差す。
「ん?何だ?…おわっ!」
いつの間にか、加藤さんが俺の腕に手を回している。
急いでそれを振り解き、加藤さんを睨む。井口は弁当を食べるのを止め、俺と加藤さんのやり取りを食い入る様に見ている。
不幸中の幸いか、事務所はこの3人しか居ない。井口には後でよく言って聞かせよう。


