知らない間に 目から水がこぼれた。 認識したのは 太ももに水があたった瞬間。 認識こそはしたものの 認知はしたくない。 あたしは泣いてない これは意地を張る魔法 あたしは泣いてない これは弱い心を守る魔法 あたしは泣いてない 3回唱えたって何も起こらない 意地を張って 自分を守って 他人を遠ざけても 何もかわらないんだ。 「大丈夫?」 黒崎が根津の匂いをまとったままあたしを引き寄せた。 結果的に黒崎は あたしを抱き締める形になったけれど、 あたしは泣いていることを 認めたくない。