黒崎が携帯をぱちんと閉めた。



あたしはその行動を目で追い掛ける。
ついでに左手の中指にはめはれたシルバーリングにも目が行った。

さして模様も値打ちもなさそうなシンプルなリングだった。



あの指輪の後ろには…ーー



「ね、黒崎。」



黒崎は「ん?」と返事を帰した。



日本史の真木が入ってきたのと同時に根津が教室から出ていった。



「黒崎はさ、」



あぁ、そうか



黒崎はあたしの目を見て話を聞く。相づちは打たない。



「誰を追い掛けてるの?」


根津がとても目立つのだ。