*制服のボタン*バレンタインの憂鬱*陵弥


走り寄って来た愛美ちゃんが躓いた。



「うわぁ」




モロ、俺の胸にダイブ…




俺は抱きつく形の愛美ちゃんを離すと、少し屈んで。



「大丈夫?」




って、愛美ちゃんの頭にポンと手を置いた。





すると、愛美ちゃんが背伸びをしたかと思うと。




俺の唇に愛美ちゃんの唇が触れた。




えっ?




さすがの俺も不意討ちのキスには驚いた。



この娘、幸樹が好きだと思ってたから…






驚いて固まる俺を他所に、愛美ちゃんは走って中庭から出て行った。




あの娘…俺が…






走り去る愛美ちゃんの背中を見送りながら、咄嗟に凜花が頭に浮かんだ。




ベンチから見える教室の窓際に、凜花の姿がない事を確認すると。






わざわざ凜花に嫌な思いをさせる必要はないな…





凜花には黙っていよう。




そう思った。





こんな俺の、浅はかな考えで凜花を泣かせる事になるとは思わなかった。