長い…




この十数メートル先の扉に行き着くまでが、今までのどの道のりよりもとてつもなく長く感じた。


扉に行き着き、獅子の頭を模したノッカーを弥生が2回叩いた。

コンコン、なんてものではなく、もっと荘厳で厳かという言葉が似合いそうな音が響く。



ギィーと開くと思っていた小夜は、扉が音も無く開いたことに少し驚いた。


「行くぞ、気を引き締めろ」

弥生のボソ、とした声が緊張を高めた。


部屋の中は、シンプルで落ち着いたデザインに纏め上げられ、正面にはいかにも社長が使いそうな机とこちらに背を向けている革の椅子だった。


弥生は真っ直ぐに早足で机の前に行くと、跪いて頭を下げた。


床に敷かれているカーペットの所為で足音も出ないというのに、その椅子の主が頷いたように小夜には思えた。


弥生の目配せで、自分も同じようにしなければならないことに気付き、慌てて跪いた。


「№841、イオ・アルタン及び、№1073、砺波小夜、件の発明品の報告に参りました」


小夜は、目を見開いた。

弥生って偽名だったの? てか何で!


椅子がゆっくりとこちらに向いてくるのに気付き、小夜は表情を戻した。
しかし、あまり動揺は拭いきれなかった。


「顔を上げろ」


言われるままに顔を上げるとそこにいたのは、左目を眼帯で隠した少年だった。