数日後、ついに上層部に書類を提出する日。


「覚悟はいいな」


弥生は小夜を含め10人ほどの仲間に言った。

この10人は弥生が連れてきた要員で、薬に抵抗できる人材だ。

その全員が静かに頷く。

「よし。これの提出にはオレ一人で行く」

「え? 何でよ、皆で行かないの?」


小夜を筆頭に抗議の声が上がるが弥生は黙り静まるのを待った。


「悪い、これは譲れない」

しかし、未だ声は上がる。

小夜は後ろを見ると、4,5人は何も関係ないというようにたたずんでいるのをみた。

「ちょっと、あんたらもなんか言いなよ!!」

「俺らは、もうあいつを前にすると記憶を消去(デリート)されるから、どっちにしろいけない」

1人が言った。

「! あなたたち、まさか……」

「そのまさか。俺たちは既にアンドロイド化してきてる」

「そんな!! …猶予はあとどのくらいなの?」

「1週間」


それを聞いて小夜は安堵した。
が、ひっかかった。


「待ってよ、ウイルスは約3日だって弥生が言ってたよ?」

「弥生にもらった薬で遅らせてるんだ」

全員が俯き、悪いことを聞いてしまったのだと、今更ながらに気付いた。

「…ゴメン」

「別にもう気にしやしない」

小夜は、もう一度弥生に向き直った。