研究室に戻る帰り、小夜は窓に写った自分を見て絶句した。

さっきよりもしっかりくっきりと隈ができていたのだ。

そりゃ、弥生が休めというはずだと納得した。
仕方ない、今日は全部弥生に任せて仮眠スペースを独占しようと思った。


その頃、弥生は一人、研究室の片付けをしていた。

これは、賭けだ。


成功するかもわからないが、成功すれば脱出できるという希望が皆に芽生える。


いや、芽生えればいいなというオレ自身の希望でしかないな。

もし砺波が成功すれば警備はいっそう厳しくなりオレすらも何もできなくなるかもしれない。
逆に皆に気持ちの火がつけばここは混乱状態に陥ることになるだろう。


どちらにせよ、大きな変化が訪れるはずだ。


今、此処には変化が必要なんだ。

操られた仲間たちを解放するには何かしらの変化を起こしていかないと何も変わることはない。

オレ一人じゃ無理だから砺波を巻き込んだのにあいつはそんなの関係なしに一緒に行動している。
もしかしたらみんなに悪いことをしているのかもしれない。


そんな迷いは今は必要ない。
どう変わるかなんてわかるはずもないんだ。
考えても仕方がない。


報告書は、もうできている。
提出すれば動き出す。