「いってきまーす!!」

「気をつけてね」

幼稚園から帰ってすぐに家を出る。
走って近くの公園に行く。


2月29日、うるう年にしかない日。


砺波小夜 5歳の夕方のことだった。

「もーいいかい!」

「まーだだよ!」

一緒に遊ぶ子供たちの声にこたえる。

かくれんぼで見つからないとっておきの場所を目指していた。
公園の遊具の塗り替えのための柵の間をすり抜け、山の斜面にある穴に入る。
かくれんぼは得意の遊び、ここにいれば誰にも見つからない。


ただ、この日は何かがおかしかった。


穴といっても小夜が入ってもうきついくらいしかないはずの穴が、奥まで続いていた。

「? なんで?」

好奇心に素直に従い、奥まで四つんばいに入っていく。
少し行くと、緩やかな右カーブとなっていた。
まだ進む。


もう少し行くと、開けた場所に出た。
大きな空間で、大人が立ち上がっても余裕の高さがあり、半径10メートルほどの広さがあった。
通路までは太陽の光も届いていたものの、この空間までは入ってこない。

「……なんにもない…」

暗闇が怖いのの、我慢も限界。
小夜は後ろを向いてきた道を戻ろうとした。

カシャン……

何かのおとがした。