ドン!!

反射的に体が逃げようとし、男を突き飛ばした。

男の体はテーブルにぶつかり、まだ片付けられていなかったグラスが落ちてパリンと音を立てる。
その間に小夜は店のドアから外へ走って行った。

「小夜?! どうした?!」


音を聞きつけ、佐山が出てきた。


「てめえ、小夜に何をした!?」


佐山が男の胸ぐらをつかんだ。


「はぁっ、はぁ…」


小夜は動揺し、少し走っただけで息が切れてきた。

ポケットの携帯を取り出し、震える手で電話をかける。

RRRRR……数回の呼び出し音の後、電話をとる音がする。

「………助けてっ!」


電話をかけた相手は早苗だった。

すぐに切ってしまった。
ここでぐずぐずしてはいられない。
その思いばかりが先立って場所を告げることも忘れていた。
しかし早苗ならわかってくれるという確信があった。すぐにまた走り出す。


「小夜っ!!」

早苗が何かあったときの待ち合わせ場所である公園に走りこんだ。
少し辺りを見回すと、ベンチに小夜が座っていた。


「早苗……」


小夜が顔を上げる。
怯えていて、いつもの様子からは想像もできない小さな小夜だった。

「どうしたの? 何があったの? 佐山さんは?」

「……」

早苗の問いかけに小夜はうつむいた。

「ダメだねあたし……また逃げちゃった。」

「小夜? どういう――」

「小夜!!」


早苗の言葉をさえぎり、公園に飛び込んできたのは佐山だった。