自分の口から出た言葉にあたしは驚いた。


今、あたし、なんて言った?




時計、屋さんって、





ぶつかった彼を見ると、あちらも凄く驚いた顔をしていて。





「…もしかして、アリス?」



その言葉にチクリと胸が痛む。




チガウ、チガウ、


あたしはアリスなんかじゃ…





そう思っているのに首を縦にも横にも振ることが出来ない。




あたしがなにも反応しないでいると、彼はあたしに笑い掛けながら言った。



「少し、お話でもしませんか?」



少し戸惑っているようだけど、その目にはちゃんとした意志が感じられて。



あたしは知らず知らず頷いていた。





(ああ、時計屋さん)(ずいぶん愛想が良くなったのね)