くう、くう。白い鳥が泣く海。クジラが潮を噴く海。無数の波が打ち寄せる群青の海。
 何も無い、どこまでもどこまでも何も無い海に、僕は皺の刻まれた自分の手をかざした。

「ねえ、ロエン」
「うん、なあに?」
「船は・・・・・・」
 船は来る。蓬莱島から薬を乗せて。希望を乗せて。
「あの水平線の彼方から来る船は・・・・・・」

 マザーのところに行こう。
 そしてお昼ご飯を食べて、またここで待とう。
 夕御飯を食べて眠り、朝目覚めてまたここで待とう。明日も明後日も、その次の日も。
 僕らはこの砂浜で船を待とう。

 ──船は、僕らに気づいてくれるだろうか。

 僕は船というのがどんなものなのか知らない。