「あたしね、大学がイヤになったの。
あたしの彼氏があたはしの友達と浮気してて、それで気まずくなっちゃってさ。」


新幹線が出発して30分くらい経った時リサコさんが話してくれた。

「友達にも彼氏にも怒ってる訳じゃないの。ただ、自分だけ何も知らなかったことがイヤなの。」


リサコさんはため息まじりに話した。


「でも逃げてちゃダメよね。」

「そんなことないですよ。
辛かったり、苦しかったりしたら逃げて、また考えて、答えを出したらいいんですよ。」


「…ありがとう。」

リサコさんの顔が少し和らいだ。


「さゆりちゃんはどうして1人で旅行してるの?」


リサコさんはずっと疑問に思っていたみたいだ。


---「辛かったり、苦しかったりしたら、逃げて、また考えて、答えだしたらいいんだよ。」---



ねぇ…奈央、あたし、この1年間ずっと逃げてたの。


会わないで、考えないようにしたら忘れられる…そう思ってた。


だけど、想いは募るばかりで…

あなたのすべてが忘れられなくて…。



「…さゆりちゃんどうしたの?
どうして泣いてるの?」


気がつけば、あたしの頬には涙がつたってた。