ピアノのとこに、まずは基礎練習用のハノンの教科書を出して並べてるアタシに、奈津子先生が聞く。 「実は…ちょっとなっちゃんに相談したいことあんだ。」 奈津子先生のコトを昔から"なっちゃん"って呼ぶアタシ。 今、二人も子供のいる彼女をこう呼ぶのは、知らない人が聞いたら失礼だと思うのかもしれないけど、なっちゃんは何も気にならないみたいで、ずっとそう呼んでる。 「何?」 にっこり笑う彼女。 「あのね…実は最近アタシ音大に行きたいかもなんて考えてたりして。」