『お母さん、私のマフラーどこ~?』

『昨日あなたの部屋に置いたわよ』

『あぁ、あった!じゃあ学校行ってくる』



11月も下旬。



枯れ葉がカサカサ音を立てて、コンクリートを転がる。


雪が降るにはまだ早い季節だけど気温がどんどん低くなって、今日からはマフラー使うことにした。

首元は暖かいけれど足は寒い。
マフラーは乾燥している私に静電気を呼び寄せる、マフラーの生地で学校着いたらバチバチいうかもとなんとなく想像出来た。

そして…
足が寒い、それだけでスカートを長くするのはプライドが許さない。
母にそのことを話すと『10年経てばそんなプライドが馬鹿馬鹿しかったなぁって思ってくるわ』と笑っていた。



8時。


後ろから誰か私の名前を呼んでいる。
『山沢っ!!』

『伊藤おはよ』

伊藤…


クラスの男子。
小学生の時から友達のような感じで…
生意気でうるさくていじわるで、もう5年以上前から知ってるけど未だに嫌い。

でもなんか憎めなくて、

でも…嫌いなような。


『おまえ今日からマフラー?』

『そうだけど、』

『俺もマフラー欲しいな。なぁ買ってくれない?』

『はぁ?嫌だし、なんで伊藤のためにお金遣わなきゃいけないの?イミフ』

『いいじゃん、俺が頼んでやってるじゃん』

『絶対買わないし』