魔王に忠義を

特攻だった。

俺が意を決した一歩を踏み出す。

その時。

「砲撃隊、一番二番、撃てぇっ!」

威勢のいい号令の下、凄まじい轟音と共に砲撃音が響いた。

同時に次々と魔王の腕に命中する砲撃。

振り向くとそこには、火器を携えた軍勢が布陣を敷いていた。

あの装備…ドーラ軍か?

それだけではない。

「出し惜しみするな!風の加護は魔王とて恐れるに足らず!」

俺達に追い風の如く吹き付けるのはフーガの魔法使い達の風魔法。

「他の民に負けるな!火の民の勇猛さを見せつけろ!」

ファイアルの狩猟者達も自慢の得物を手に突撃を敢行する。

「全軍前へ!日頃の訓練の成果を見せ付けろ!」

統制の取れた動きを見せるのはライスト軍。

「傷を負った者は後方へ運べ!どこの民だろうと構うな!今は小競り合いなどしている場合ではない!」

アイスラの連中までも、傷ついた兵達の支援に現れていた。

驚愕する他はない。

この世界の全ての民族が、魔王討伐の為に兵士を送り出していた。

五つの民族だけでなく、弓を射るエルフや、豪腕を振るうドワーフの姿すら見受けられる。

あれ程仲違いしていた民族が…。

魔王という共通の脅威の前に、一つになろうとしていた。