魔王に忠義を

緊張が走る。

遭遇と同時に戦闘になるに違いない。

いつでもブレードを抜ける態勢をとり、接近してくる自動二輪を見据えた。

アイシャも気持ちを切り替えたのか、強張った表情で俺の傍らに立っている。

…やがて自動二輪が俺達を視認したのか、一定の距離を置いて停止した。

エンジンは切らないまま、こちらと対峙する。

自動二輪を操っているのは女だった。

黒いベレー帽、黒いスーツ。

砂避けのゴーグルをつけてはいるが、一度は標的として遭遇した相手だ。

俺とて忘れてはいない。

…それはナハト・リアリーだった。

そしてナハトがいるという事は。

「お前…!」

背中に大剣を背負った少年が、自動二輪の後部シートから降りてくる。

「ここで何をしてるんだ…またナハトの命を狙って待ち伏せしてたのか!」