魔王に忠義を

炎の鞭で打ったのだ。

当然ガソリンに引火し、ネルスの目の前で爆発が起こる!

ファイアルの炎の魔法は大した威力だ。

炎を操る技術にかけては、他のどの民族にも劣らない。

しかしそれも、己の意思で生み出した炎の場合だ。

突然の、しかも意思に反した炎、その暴発には思いの他脆い。

「ぐあああああっ!」

爆発によって飛散した炎により、ネルスは顔に重度の火傷を負ってもがき苦しむ。

そこへ刃を突き立てるのはたやすい事だった。

跳躍と共にネルスを地面に押し倒し、ブレードで腹を貫く!

皮膚を突き破る感触、生温かい血の臭い。

平民も貴族も、死ぬ時は平等だ。

ネルスは喀血と共に、ひゅうひゅうと気の抜けた呼吸音を繰り返した。

…勝負ありだ。

刃を引き抜くと、炎と同様の真紅の血が傷口から溢れ出す。

この出血量だ。

このまま放っておいても死ぬ。

俺はブレードについた血を拭い、先を急ぐ事にする。

だというのに。