魔王に忠義を

ネルスが鞭を振るう!

その度に大地を走る炎。

炎はネルスを中心に蜘蛛の巣状に広がる。

回避は困難だ。

「ヴァン!」

咄嗟にアイシャが風の障壁で俺を庇う。

だがその風の障壁さえも、瞬時にして熱風と化してしまう。

炎が直接体に触れなかっただけマシだが、それにしても圧倒的な威力。

五つの民族に与えられた五つの精霊の力。

その中でも抜きん出て高い殺傷力を持つといわれる炎の魔法だけはある。

魔法と剣。

戦いになった場合、有利なのは当然魔法だ。

間合い、威力、汎用性。

どれをとっても魔法が剣に勝てる要素はない。

『火の玉』アキラの持つ討竜の剣はファイアルの炎の魔法さえも両断できたというが、そのような剣は例外中の例外だ。

魔法は精霊の領域であり、魔法に剣で立ち向かうというのは、精霊を剣で斬るのと同義なのだ。

魔法に立ち向かうには魔法しかない。

それはこの世界での常識であった。