魔王に忠義を

それ以上の問答は不要だった。

ネルスは言葉もなく鞭を走らせる!

…ネルスの鞭捌きは、お世辞にも上手いと言えるものではなかった。

そこいらの猛獣使いの方がまだ上手く鞭を扱うだろう。

ネルスの鞭は、ただ感情に任せて振るっているというだけ。

だがその感情に任せる、というのが厄介なのだ。

魔法は精神力に左右される。

『怒り』の代名詞にも使われる炎ならば尚更だ。

炎の鞭は振るわれる度に真紅の炎の波を放ち、大地を焦がす。

その熱量により、間合いから離れていても肌を焼かれているような錯覚に陥る。

近寄れなかった。

しかし逆に言えば近寄ってしまえば有利に働く。

遠い間合いでこそ効果を発揮するのが鞭だ。

「ヴァン!」

ネルスの放つ炎を、アイシャの風が薙ぎ払う!

猛り狂う傲慢の炎を鎮める、清浄なる風。

そしてその合間を縫い、俺はブレード片手に突進した!