魔王に忠義を

「!」

2ストロークエンジンの咆哮が、ネルスの言葉を遮った。

…ネルスの視線が俺に向けられる。

「話の途中だ…その耳障りなガラクタを止めろ」

「そちらこそ道を譲れ。封印の地に向かっている途中だ」

俺はブレードの切っ先を傲慢な貴族に突きつける。

「ついでにアイシャの目の前で、地面に頭を擦り付けて詫びろ。この女はお前如きが陵辱していいような安い女ではない」

「ヴァン…」

まだ涙の乾かぬまま、アイシャが大きな瞳を俺に向けた。

「貴様…元構成員なのだろう?らしからぬ甘っちょろい発言をするじゃないか」

ネルスが鞭を振るって地面を打った。

打たれた地面から火花と煙が上がる。

「もしやその女に情が移ったのか?それで侮辱されて…」

「黙れと言っている」

アイシャでなくとも、この下品なファイアル貴族の物言いは聞くに堪えなかった。

「発言は必要ない。道を譲るか微塵に刻まれるか」

俺はチェーンソーブレードを構えた。

「今すぐ決めろ、畜生風情が」