魔王に忠義を

街々を飛び越え、眼下に森林や草原を見下ろしながら、俺達は空を翔ける。

魔王の封印はファイアルの最南端にあるという。

かなり大規模な魔方陣で封印されており、並大抵の魔力ではその封印を破る事も難しいという。

だが秘密結社にも魔法の使い手は多く所属している。

何しろ魔王復活を目論む組織だ。

封印を破る為の研究など日夜続けているだろう。

そして常に暗がりに潜んでいた連中がこれだけ大規模な行動を起こした。

ソロバンを弾いて勝算があると見込めたからこそ、行動に移ったのだ。

早いうちに連中の行動を阻止しておかなければ、400年前や15年前のように英雄様が現れるのを待つよりも早く、魔王が復活してしまうかもしれない。

そこらへんはアイシャも感じているのだろう。

飛翔速度はますます上がっていく。

しかし。

この飛翔という奴は、地上から見れば実に目立つのであろう。

足止めの為にどこかに潜伏しているであろう秘密結社の構成員にとって、こんないい標的はない。

突如として。

「!?」

眩い真紅の輝きを放つ帯が地上から伸びてきて、飛翔するアイシャの足首に絡みついた!

絡みついた途端。

「うあああっ!」

アイシャの肌を焦がす臭い。

ジュウッという音。

その帯が炎で形成されているからこその現象だった。