魔王に忠義を

「待ち合わせにドーラなんぞ指定するな…反吐が出る」

顔をしかめる俺に、ハニワはおどけた動きを見せる。

「そう言わないで下さい。ここは貴方の母君の故郷でしょう?いや…父君でしたかね…母君はファイアルでしたか」

「どっちでもいい」

俺はハニワの無駄な話を断ち切った。

「せっかちなのも相変わらずですか、ヴァン…秘密結社随一の剣の使い手でありながら、その気の短さが災いして『上』へと上がれないの、自覚してますか?」

「……」

出世になど興味はなかった。

俺の興味は唯一つ。

ドーラとファイアル。

この二つの土地と民族の滅亡。

15年前の戦で、愛し合っていた父と母を迫害し、ハーフだった俺を迫害し、遂には両親を死に追いやった忌むべき種族達。

いっそ殺し合って共倒れすればよかったのだ。

それが汚竜討伐を機に、ファイアルとドーラが歩み寄りを見せるだと?

その和平のきっかけとなったナハト・リアリーも、俺にとっては唾棄すべき存在だった。