魔王に忠義を

そろそろ日が暮れるという事もあって、街は多くのファイアルの狩猟者で賑わっていた。

魔物を相手にした狩りで生計を立てるファイアルの民。

自然と荒くれ者が多くなり、娯楽は酒と喧嘩、話題と言えば仕留めた魔物とその素材で造った武具の自慢という、何とも粗暴な人種である。

無闇に魔物や野生動物を狩るという事で亜人種エルフから、暴力による解決しか知らない事からアイスラ人からそれぞれ嫌われているという。

その点に関しては俺も同感だ。

街の大衆酒場らしき店に入った俺達は、とりあえず食事をとって体を休める事にする。

店に入るなり。

「ひゅう♪」

「色っぽいネエチャンのお出ましだぜ」

酒場の酔っ払いどもが下卑た声を上げる。

俺の後ろを歩くアイシャの出で立ちを見ての声だった。

アイシャは踊り子という職業柄、露出の多い衣装を身にまとっている。

その為。

「きゃあっ!」

タチの悪い狩猟者達によって、肌に触れられたりもする。

「さわんじゃないわよオッサン!」

すかさずテーブルに置いてあった葡萄酒の入ったグラスを掴み、体に触れた狩猟者にぶちまけるアイシャ。

「ぷあっ!てめぇ!」

当然酒をかけられ狩猟者もいきり立つ。

両者一触即発の様相だ。