魔王に忠義を

酒場を出ると、外は砂埃と薬品臭の入り混じった風が吹く。

外套で口を覆い、ゆっくりと歩き出す。

ドーラの工場地帯を抜け、人通りのある路地を避け、路地裏へ。

人目がなくなったの確認して。

「ここらならいいだろう」

俺は誰ともなく呟く。

その声に呼応したかのように。

「相変わらずいい勘ですねぇ、ヴァン・アルナーク」

地面が小さくせり上がり、そこから掌に乗りそうなほど小さな泥人形が姿を現した。

ゴーレム。

特にこの形状は異世界では『ハニワ』と呼ばれるらしい。

ドーラ貴族が唯一行使できる魔法だと聞く。

つまりこの使い魔の主はドーラ人だという事だ。

ついでに言えばハニワだけで俺に接触してくる辺り、用心深く臆病者であるとも言える。