魔王に忠義を

「ああっ、もうっ!」

何をいらついているのか、アイシャが立ち上がる。

「ここからファイアルの封印の地ってどのくらいかかるかしら?一日二日はかかるわよね…ん、でも風の魔法を利用すれば半日は稼げるかしら?いやいや待て待て、準備も無しに私が行ってどうなるの、何か強い武器が欲しいわね…魔王に私の悩殺の舞いが通用するのかしら…」

何やら方向性を誤った思案に暮れる彼女。

「アイシャお前…魔王復活を阻止するつもりか?」

「当然!」

アイシャは胸を張った。

「面白おかしく生きられない世の中なんて真っ平御免よ!魔王が復活したって、何一ついい事なんてないんだから!」

「…お前は…」

真摯な瞳をアイシャに向ける。

「お前は…お前自身を陵辱したハインベルトの貴族が死んでしまえばいいと思った事はないか?ハインベルトはファイアルの貴族…お前には殺せないかもしれんが…魔王が復活すれば、貴族とて敵ではない。泣き叫び、命乞いしながらハインベルトが踏みにじられる…そんな姿を見たいと思った事はないか?」

「はあ!?」

明らかにキレたと思われる声で。

アイシャは俺に人差し指を突きつけた!

「Ⅵ番貴方馬鹿じゃないの?魔王が悪人だけ選り好みして殺すと思ってんの?」