わかりやすく言えばこの老婆は秘密結社の情報屋だった。

物乞いの姿でこのライストを徘徊し、様々な情報を仕入れておく。

俺のように時折訪れる秘密結社の構成員に、必要とする情報を提供する。

姿形で判断してはいけない。

秘密結社に限らず、裏の組織はこんな連中を世界中いたる所で飼っているのだ。

「ナハト・リアリー?…あぁ…汚竜を仕留めた娘っ子かい…ドーラの貴族だったね…没落貴族に何の用だい?捕らえて奴隷市にでも出すのかい?ああいう年端もいかない娘を好む好色貴族も多いっていうしね…ファイアルのハインベルト家の長男坊も好色家で有名で…」

「無駄話は必要ない。情報だけを喋れ」

苛立ち混じりに睨みをきかせる。

それだけで老婆のよく回る舌は動きを止めた。

「…運がいいね。ナハト・リアリーならつい一時間ほど前にライスト王国に来たばかりだよ」

そいつは確かに運がいい。

「それでどこへ?」

「そこまでは知らないよ…しかし、このライストで有名人っていったら限られてるだろう?霜刃のセリーヌでも見物に来たんじゃないのかい?ドーラを立て直すならば、ガーディアンの組織力は役に立つだろうからね」