汚竜の最期に興味を失ったように、青年は振り向く事すらせずに歩く。

…彼は期待していた。

ドーラ地域に迷い込んできたはぐれ竜。

その竜がまさか、このような変化を遂げるとは。

まさしく天が与えたもうたギフト。

がらにもなく死んだ筈の神に感謝の言葉など告げてみたりもしたものだ。

竜はファイアル貴族の魔法も、ドーラの兵器すらも寄せ付けぬほどに成長し、事実ドーラ領土の街ひとつを壊滅させ、ドーラ貴族の一つリアリー家を断絶寸前にまで追いやった。

…それがまさか、ポッと出のファイアルの少年狩猟者などに仕留められようとは誰が予測しただろう。

あの少年の持っていた業物…討竜の剣とかいったか。

あの得物さえなければ、汚竜は今頃ドーラ地域そのものを制圧していただろうに。

…過ぎた事は言っても始まらない。

青年はひたすらに歩く。

復興するであろう街などに興味はない。

彼の望む事は唯一つ。

再生ではなく破壊。

誕生ではなく死。

ドーラとファイアル。

この二つの土地と民族の滅びこそが、彼の生き甲斐だった。