家族の事ぐらいしか記憶できない詩織さんが初めて他人の事を覚えかけていた。

 その人がどんな人か知りたくて詩織さんのお母さんは僕に会おうと思ったらしい。 



 涙ながらに語る詩織さんのお母さんに僕はどんな顔をすればいいか、なんと声をかければいいのか分からずただ静かに嗚咽だけを聞いた。