「レナさぁ。
最近ちょっと、マジでアンタのこと心配になる瞬間があるんだけど。」


仕事終わり、葵に食事に誘われた。


笑い話するような顔じゃないとは思ってたけど、正直お説教は聞き飽きた。



「レナはさ、何にそんなに必死になってるの?」


「…見たくない現実、とか…」


「ジルって人が来ない現実?」


答えずに居ると、向かい合う彼女はため息混じりに肩を落とした。


さすがはうちの店のナンバーツーだ、馬鹿っぽいんだか鋭いんだかわかんない。



「…アイツだけのことじゃないよ。」


遅すぎる言葉に今度返答しなかったのは、葵の方だった。


見つからないシュウに苛立ちながら、探すほどの余裕すらもないこの現実とか。


すれ違う度にあたしを呼び止めるいけ好かない関西弁の男のこととか、明確じゃない約束とか、知ることを許されない仕事のこととか。


ただ、連絡すらもないこの現実が、どうしようもなく気分を沈めるのだ。


やっぱあたし、最終的にはジルのことかよ、って。


酔っ払いの頭の中は、もうめちゃくちゃすぎて、意味不明。



「支えてくれる人、必要としてんじゃない?」