「ロゼ、入れろよ。」


「……は?」


「だから、ロゼだって。
飲みたくない?」


いや、待ってください。


そんな、さも当然のように飲むモンじゃないし、とあたしは、戸惑うように彼の顔を伺ってしまう。



「お金なんか使わなくて良いって。」


「…あ?」


「ホント、指名してくれただけで良いんだし。」


「俺が飲みたい気分なんだから頼め。」


正直、どうしたものかなぁ、と思っていると、すかさず横からギンちゃんが口を挟んだ。



「好きにさせてやりぃよ、レナちゃん。
こいつ今、究極に機嫌悪いねんから。」


彼もそう言ってることだし、ジルの命令口調と眉を寄せたような顔にそれ以上逆らうことは許されず、あたしはおずおずと黒服を呼んだ。


確かに、ドンぺリ入れて、とか頼んだこともあったけど、でも、今はそんなの望んでるわけじゃないし、お金の掛かる女だと思って嫌われるのも嫌だったのだ。


なのにそんなあたしにお構いナシにボトルが運ばれて来て、思わず小さくため息を混じらせてしまう。



「ムカつくけど、仕事ちょっと一段落したし。
少しの間暇になるし、金入ったし、今日は特別だ。」


そんな特別な日に、あたしに会いに来てくれたかな、と都合の良いことを考えてしまう。


機嫌が悪いのは本当みたいだし、まぁ、それなら仕方がないな、と思い、「飲み過ぎ注意だよー。」なんて言って、みんなで乾杯した。



「お前、その代わりこの後、アフター付き合えよ?」


「…うん。」


喜んで良いものなのか、どうなのか。


本当に、何を考えているのかわからない男だ。