「それよりお前、正直な話、好きな男居るのか?」


「何かそれ、みんな言うんだよ。
居ないって言ってんだけどねぇ。」


むしろ居て欲しいよー、とあたしは、ケラケラと笑う。


岡ちゃんの前では何ひとつ包み隠すことはないんだけど、さすがにあたしのことを飼ってる危ない男のことが気になってます、とは言えるはずもない。



「やっぱレナは娘みたいだからよぉ、幸せになって欲しいんだよ。」


言葉に詰まり、あたしは曖昧に笑った。


みんなそんなことを言うけれど、やっぱりあたしはよくわからないのだ。



「岡ちゃんは、幸せ?」


「レナと酒飲んでるからな。」


「ははっ、そんなこと言っちゃってぇ。」


結局、上手くはぐらかされた気がする。


もちろん、あたしも適当にはぐらかしたのだろうとは思うけど。



「岡ちゃんは娘想いだねぇ。
羨ましいってゆーか、娘さんもきっとそう思ってるよ。」


「そうかぁ?
減らず口ばっかで嫌になるけどなぁ。」


「それはきっと岡ちゃん似でしょ。」


「レナも俺に負けず、減らず口だしなぁ!」


「失礼な。」


岡ちゃんみたいなお客ばかりで、毎日がこんな感じならばもしかしたら、この仕事が少しばかり好きになっていたのかもしれない。


なんて、そんなことは無理だけど。


何となくジルに会いたくなったけれど、やっぱあたしって、受け身なんだろうなぁ、と思う。