「レナさん、何か死相が出てますけど?」


「ご忠告ありがとう、葵さん。」


なんて失礼なヤツだろう、と思った。


でも、目が座ってるよ、と付け加えられ、あたしは引き攣る口元を無理やりに上げる。



「何か、らしくないじゃん。」


「まぁ、色々あってさ。
大変なんだよ、あたしも何気にさぁ。」


「アンタってさぁ、いっつもアバウトな言葉ばっか使うよねぇ。
聞いてるこっちが意味不明なんだけどー。」


「そりゃスマンねぇ。」


そう、適当に受け流し、あたしは視線を手元の携帯へと落とした。


今日も結局ジルは昼頃に帰ってしまい、次はいつ会えるんだろう、と思うと若干不貞腐れてしまうのだ。


またあの悶々とした日々に逆戻りかよ、ってさ。



「さーて、お仕事行くよー。」


「ふぇーい。」


軽くグロスを塗り直し、葵が立ち上がったのであたしも立ち上がった。


一度鏡で口角を上げた顔を作り、それを崩さぬようにまた、同じような一日を繰り返すのだ。