「落ち着けよ、お前。
つか、それ以上飲むなって。」


そう、煙草を咥えたジルは、テーブルの上に置いているあたしの飲みかけの缶ビールを自らの前へと置き直した。


結局、それ以上聞かれることはなくて、やっとあたしは少しだけ冷静になれた気がした。


気紛れなジルが本当にシュウを探してくれてるんだ、ってことだけでも、感謝しなきゃならないはずなのに。



「あたしね、シュウを見つけ出した時、やっと自分の人生歩める気がするの。」


僅かに隣の彼へと視線を向けてみれば、ジルはただ、何も言わずに白灰色を吐き出した。


シュウの話をする時のジルはいつも、ひどく考え込むような顔をする。


つまんなそうってゆーか、本当はこんな話なんてしたくない、って感じ。



「ごめん、無理して探さなくても良いから。」


「無理して探してんの、お前の方に見えるけど?」


何となく、言葉が出なかった。


無理をしてない、と言えば嘘になるけど、やっぱりジルには見透かされてる気がするから。



「何かさ、おつまみとか買いに行こうよ!」


そこのコンビニに、と空気を変えるように笑顔を作ってみたけれど、何となく虚しくなってしまった。


ジルが何が好きかなんて知らないから、当然のように笑わせるような話のひとつも出来ないし、キャバやってんのに軽く必死な自分自身は滑稽そのもの。


多分あたし、ジルにだけは嫌われたくないのだろう。