「お前さ、寒くねぇの?」


「寒いの?」


「寒いだろ。」


「マフラーあげたでしょ?」


「あぁ、家にあるわ。」


「使わないから悪いんじゃん。」


「けど、なくすと困るだろ。」


「どうやったら首に巻いてるモンなくすのよ。」


それもそうか、と彼は言う。


寒がりで我が儘で、でも優しい男。


こういう他愛もない会話に、随分癒される。



「今日、うち来る?」


「レナちゃん襲われちゃうぜ?」


「じゃあ、やっぱダメ。」


「おい、こら。」


人生は死ぬまで通過点だと、葵が言っていた。


でも、例え分岐点に立ったとしても、きっとジルとあたしは同じ方を向いていると思う。


色んなものを背負って、色んな出会いと別れを繰り返して、やっとあたし達は、かけがえのないものを見つけたんだ。


時に傷つけ合って、時に見失いながら、月影さえ見えない場所で出会った。


軌跡の奇跡とはよく言ったもので、まさしくそんな感じじゃなかろうか。


涙を流して、ぬくもりを知って、愛していると気が付いた。


そういえばあの日も、今日のように、底冷えする一日だったね。