寒すぎる自分の部屋に戻り、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、それを流し込んでベッドへと身を投げる。


冷たい布団に包まれて、やっと少しだけ、落ち着きを取り戻したような気がした。



「…吐きそう…」


こんな日は、たまに訪れる。


自暴自棄になるように飲んで、そんな自分を持て余すようにまた酒をあおる。


あぁ、あたしってジルと似てるんだな、と何となく思った。


てか、アイツのことばっか考えてるなんて、マジ滑稽。


何かさ、あたしばっかアイツのことを求めてる感じじゃんか。



「…ありえないし…」


手探りでベッド脇に置いている引き出しを開け、その中に入れていた手帳を取り出した。


取り出して、そしてその間に挟んでいた一枚の写真を引き抜き、携帯の淡い明かりだけに灯された中で、それを眺める。



「…シュウ…」


写真の中で、中学の頃くらいのシュウが、笑顔を零していた。


今となってはとても憎々しい顔に、忘れかけていた怒りが掘り起こされ、あたしは思わず唇を噛み締めてしまう。


勝手に病気になって、あたしから両親の愛情とかを取り上げて、おまけに普通の生活がしたかった、とか置き手紙を残し、消えてしまったのだ。


普通の生活がしたかったのはあたしの方なんだよ、馬鹿野郎。


例えば家に帰ったってずっと独りっきりで、シュウの看病を終えて帰ってくる夜の8時に合わせ、まず母親の食事を作る。


それから夜のパートに出掛ける彼女を見送り、今度は残業を終わらせて帰宅した父親のために、晩ご飯を温め直すのだ。


あたしの青春は、そんな感じだったっけ。


よく夜中に家を抜け出し、夜の街に繰り出していたけど、あの頃からあたしはずっと、こんな風に毎日を過ごしていた。


ホント、死んだ方がマシって感じ。