いつの間にやらお店は閉店していて、あれほどうるさいと感じていた場所は、あたしと拓真だけの帳が下りている。


薄情な葵はさっさと帰ってるし、おまけにベロンベロンに酔っ払ってぶっ倒れて、あたしは最悪に迷惑なお客になってしまったようだ。



「…気は済んだ?」


「ん、でも気持ち悪い。」


「そりゃ、あれだけ飲めばねぇ。」


ソファーに寝転がって胸焼けを堪えていると、真横の彼はそう白灰色にため息を混じらせる。


散々付き合わせて、さすがに拓真にも多大な迷惑を掛けてしまったし、とあたしは、あまり焦点の合わない瞳を無理やり持ち上げた。



「いくら?」


「良いよ、今日は俺の奢り。」


「……え?」


「たまにはさぁ、そういう時だってあんじゃん?
何があったかは知らないけどさ、元気出せよ。」


拓真のそんな言葉で、ジルに酒に逃げるな、と言ったことを思い出した。


なのにあたしは、一体何をやっているんだろうかとまた、ソファーに顔をうずめてしまう。



「…ごめん。」


「気にすんなって。
その代わり、今度飯でも奢れよ?」


「ふぇーい。」


ホント、アンタは良いヤツだよ。


結局あたしは生返事しか返せないまま、拓真が呼んでくれたタクシーに乗せられて、家路についた。


一応彼には車内で謝罪のメールを送っておいたけど、逆に心配されるような内容を返されてしまい、やっぱり罪悪感に襲われる。