覚悟を決めたような瞳に、あたしは自然と口元を緩めていた。


扉から出ると、ドアの前の長椅子に、彼は腰を降ろしている。


顔をあげたギンちゃんと目が合い、呼んでるよ、とだけ言って中に入るように促すと、あたしを一瞥した後、少し緊張した面持ちの彼は立ち上がる。



「なぁ、ギン。」


「何やねん、ハグなら男は勘弁やで?」


重苦しい空気に気付いたのだろう彼は、誤魔化すように笑う。


が、すぐに馬鹿みたいだ、と言った風に諦め、「んで?」と、ジルを見た。



「俺の最初で最後の我が儘、お前は許してくれるか?」


「…は?」


「お前のこと裏切って、良い?」


何を言ってんだ、と言った顔だった。


ジルを見て、そしてあたしを見た後で、「何考えてんねん?」と彼は、眉を寄せる。


それでも無言の沈黙が続き、ギンちゃんは諦めるように肩をすくめた。



「何やようわからんけど、どうせお前、勝手に決めたんやろ?
やったら大親友の頼みやし、好きにせぇとしか言えんわ。」


彼はきっと、あたしとジルが一緒に死のうとしているだなんて、微塵も思ってはいないだろう。


それでもあたし達は、気付けば顔を見合せて笑っていた。



「嶋さんは?」


「アニキらと話し込んどったで。
そら、チャコールの内部事情アイツがゲロったらシャレんならんからなぁ。」


まぁ、任せとけばえぇみたいやけど。


と、彼はまるで他人事のように言う。


その所為で自分も捕まったとしても、しょうがないと言った顔だった。