あたしが行って、それでどうなるというのだろうか。


第一、拓真を裏切ることになるじゃない。


あの時助けてくれたのは、拓真なのに。



「頼むから、俺の親友助けたってや!
もうこれ以上、誰かが死ぬの見んの嫌やねん!」


はっとした。


ジルは生死の境を彷徨っているのだと言う。


死んだらもう、シュウのように、二度と会えなくなるということ。


あたし達は肝心なことを何ひとつ話して来なかった。


だから後悔はもう、したくない。



「行くんでしょ?」


あたしに向けて頭を下げていた彼に、そう聞いた。


少し辛そうな顔で口元を緩めた彼は頷いて車に乗り込み、あたしもその助手席のドアを開ける。


ジルの車とは違い、ひどく車高が低くて乗り心地の悪いアメ車だった。


けれども今はそんなことさえ気にならないほど、体中が震えている。



「俺の目の前で刺されてんで、アイツ。」


自嘲気味に、まるで独り言でも零すように、彼は口を開いた。


視線だけを向けると、泣き出してしまいそうな顔のギンちゃんは、やはりいつもとは違っていた。



「嶋さんのこと、庇うたんや。」