酒焼けのような胸焼けに襲われるのは、自分自身への嫌悪からだろうか。


多分、あたしの心ってのはデッカイ穴が開いていて、例えどんなことがあろうとも、底の空いたバケツのように、全てが流れていくのだろう。


だってさっきから、何にも心が動かされなければ、何ひとつ感じることもないのだから。


まるでジルのトライバルのように、真っ黒い色をしている気がした。


締め日、拍手の中で立ち上がってオーナーから茶封筒を受け取り、その厚みで大体の金額を思い浮かべる。



「ありがとうございまーす。」


「レナ、御苦労さま。」


まぁ、来月も頑張ってね、と付け加えられ、あたしは曖昧にだけ笑って見せた。


だけどもすぐに次の子の名前が呼ばれ、あたしは無意識のうちに安堵のため息を吐き出してしまう。


頑張るけど、でも、頑張り過ぎず。


追い抜かないようにするにもそれなりに気を使うし、今月もまぁ、無難に終わったと思う。


生活費の他に、携帯代や美容院代、ネイルにもお金使わなきゃだし、それなりに洋服も買わなきゃで、何気に出費が多いのもまた事実。


それでも結局は、作りモノの自分を煌びやかに見せるためでしかないのだ。



「葵、今回もすごいねぇ。」


「任せなさーい。」


さすがにナンバーツーの封筒は分厚い。


葵は彼氏が居ても色ボケするどころか益々綺麗になって仕事張り切ってる感じだし、単純に器用に何でもこなしてるように見えて、羨ましくもあるのだ。



「じゃあ今日は、葵の奢りで飲み決定ね。」


「あ、だったら久々に聖夜のお店行こうよ!」


「てか、アンタが行きたいだけじゃん。」


「バレましたか。」


「バレバレだっつの。
まぁ、別に良いけどね。」


そんな感じで、恒例になりつつある飲みが決定した。


あたし達は月に1,2度、葵の彼氏である聖夜クンの勤めるホストクラブに行って飲むことがある。


まぁ、あたしは葵に付き合うような形で適当に一緒に居るだけ、って感じだけど。