言葉が出ない。


拓真と居る今、そんな気持ちになんてなるはずないのに、それでも何かに期待しているような自分が居たから。


もう関わらない方が良くて、だからあの時の選択だって間違ってはいないはずなのに。


それでもあたしは未だ、顔を俯かせたまま。


何も答えずにいる沈黙は、どれほどだっただろう、ジルはあたしの横をかすめるように、立ち去った。


力が抜けて、また涙が溢れて、その場にしゃがみ込む。


あたしから立ち切ったものを今更になって引き寄せるようなことは出来なかったし、彩の元に行くのだろう彼を制止することも出来なかったのだ。


ただ、傷口が開いたような感覚に襲われた。



「…シュウ…」


墓石は、太陽の光に照らされながら、滑らかに輝いていた。


死にたい、シュウのところに行きたい、と思ったこともあったはずだ。


ジルが殺してくれるのなら、それでも良いとさえ思っていたのに。


ここは少し、海から遠い。


あの子は何もかもを捨てたのに、結局あたしにそんな勇気はないということだろう。


左手首にも、もう何もないことが当然のように、その感覚には慣れてしまった。


風が吹いて、涙が運ばれて、ジルの香りも消えてしまう。





今更ながらに気が付いた。

答えは簡単なことだった。



あたしはジルを愛しているんだ。