何故今更になって、こんな事実を告げるのだろう。


視線さえ合わさずにいると、彼は宙を見上げた。



「姉ちゃんは本当は、人一倍寂しがり屋なんだよ、って。
傷つけられるのが怖いからひとりで居るだけで、誰より愛されたいんだよ、ってさ。」


そう言ってたんだ、と彼は言う。


砂利だらけの地面が歪み始めたのは、涙が溢れた証だったろう。


だけどもジルは、こちらに手を伸ばしたりはしない。



「お前のこと愛してやってくれ、って頭下げられたよ。」


変な姉弟だよなぁ、と言いながら、彼は先ほどのあたしと同じように、墓石に刻まれた名前を指でなぞる。



「…傷つけるの分かってて愛せねぇよ。」


ぽつりと落とされた台詞が、風に消えた。



「なぁ、レナ。」


ひどく柔らかい声色。


呼ばれ慣れた声は少しだけかすれたように、切なさを含む。



「俺と死ぬ気、ある?」