葵の彼氏はホストで、あたしも何度か会ったことはあった。


だから言いたいことだってわかるけど、それでも今は、ジルとのセフレ以上の関係は望んでいないのだ。



「いらないよ、彼氏なんて。」


「…でも…」


「あたし、本気でヤバくなったらお客とでも平気でヤると思うし。」


そう、声を潜ませて彼女に耳打ちしてみれば、葵はあたしに向け、あからさまにため息を吐き出してくれた。



「そりゃ、ヤるなとは言わないけどさ?
幸せにはなれないよ、レナ。」


「そんなの、とっくの昔に知ってるよ。」


だってシュウに人生邪魔された時点で、あたしは幸せになんてなれないのだと知ったのだから。


てか、何で彼氏が居ることイコール幸せ、って図式になってんだろう。


少し苛立って携帯を開き、心配そうな顔した葵に無視を決め込むようにあたしは、営業メールの作成を開始した。


きっとあたしは、本当に切羽詰まったら、脂やタヌキとだって寝たりするんだろうし、こんな女と付き合うだなんて、相手が可哀想じゃない。



「時々思うんだけどさ。
レナって無理やりこの仕事に自分を馴染ませようとしてる感じに見える。」


「…それの何が悪いの?」


「別に悪くないけどさぁ。
たまに見てられない時あるよ、飲み過ぎて倒れることだってあるじゃん。」


そう、彼女は眉尻を下げた。


心配されてるってわかってるけど、でも、放っておいて欲しいと思った。


ここで辞めてしまったら、今まで必死で築き上げてきたものや保ってきたものが、全部無駄になってしまう気がしたから。


もう、引き返せないんだよ、あたし。