傷は深く、無数にあたしをえぐっていた。


大切だった人たちが、ひとり、またひたりと居なくなる度にあたしから剥がれ落ちたものは、痛みだけを残していった。


だからこそ、拓真の存在は傷薬に近かったのかもしれない。


ただれて、膿んだ患部に優しく塗り込めるように、拓真はあたしを愛してくれた。




自宅には、あれ以来足を踏み入れてはいない。


ジルに会うんじゃないかという恐怖もあったし、散らかったままのあの部屋に行く気にはなれなかった。


何より、拓真との暮らしの中で、その必要性は全くなかったからだ。


ただ、解約もしていない。


荷物だってどうすることも出来ず、ずっとあのまま放置している。


家賃だけは引き落とされているらしいけど、拓真がどうしろと言うこともなく、それには触れて来なかった。




一緒に暮らすということに、抵抗はなかった。


拓真は毎日のようにあたしを元気づけてくれたし、笑わせてもくれた。


ご飯を作ると美味しいと言ってくれるし、そんな他愛もないことで癒されもしたのだ。




拓真が好きだった。


でも、愛しているのかどうかは、自分でもよくわからなかった。