頼りなくもそう呟くと、それまで表情を崩さなかった彼が、初めて驚くような顔をした。


例え推測でしかなくとも、彩にしようとしていることさえ知ってしまったのだ。


だから出てって、と付け加えると、ジルは額を覆うように顔を隠す。


泣いているようだと思った。



「落ち着けよ。
これじゃ話にならねぇだろ。」


「触らないでよ!」


その刹那、何かが弾け飛んだ。


宙を舞うものはキラキラと輝きながら床に落ち、ころころと転がって分散する。


左手首は、擦れたように赤くなっていた。



「…あっ…」


あぁ、本当に壊れてしまったのか。


ジルの手を振り払った瞬間、何かに引っ掛かったのだろう、あたしの左手首のブルガリのブレスが、千切れ飛んだのだ。


鎖は断たれた。



「…もう、嫌だよっ…」


ジルの存在全てが、あたしを苦しめる。


何にもならない関係も、互いに疲弊していくだけの自分たち自身も、全てにおいて、涙が溢れた。


とてもとても悲しげな顔をして、ジルはあたしに背を向けた。


去っていく後ろ姿は、パタンと閉まる扉によって遮断される。





それは、

あたし達の終わりを意味していた。