「キャバ嬢のくせに、傘買う金もないんか?」


「ないって言ったら買ってくれんの?」


「タカんなやぁ。」


それは、いつものいけ好かない瞳ではなかった。



「いつまでここ居んねん?」


「もう帰るよ、用も済んだことだし。」


「ほなね。」


煙草を咥えたまま、彼は手をヒラヒラとさせるだけ。


よくわからない男だと思った。



「優しくないんだね。
嘘でも送るとか言えば良いのに。」


「俺に送られたいん?
つか、何でそんなんせなあかんねんな。」


「ほら、雨だし?」


「アホか。」


笑いながらそんな言葉を残し、彼はさっさと車に乗り込んだ。


あたしは未だコンビニの軒先に佇んだまま、雨空を見上げ続けた。


シュウが泣いているようだと思うことは相変わらずで、どうにもいたたまれなくなるのだ。


酔いが醒めるにつれ、押し潰されそうな感覚に襲われる。


こんな時は、決まってジルに会いたいと思ってしまう。


頭で考えるより先に、求めてしまうのだ。


ギンちゃんは、そんなあたしに報われない恋だと言った。


彩の顔が頭をよぎる。