「ほんで、俺を待ち伏せしてたからには用があるんちゃうの?」


「…ジル、元気にしてる?」


「は?」


それが聞きたかったの、と言ったあたしに彼は、眉を寄せてこちらに顔を向ける。



「気になるんやったら電話したら一発やろ?
俺のことだって待ち伏せせんでも、番号知ってるやん。」


確かにギンちゃんとは、初めて会った日に教えてと言われ、番号は交換していた。


まぁ、お互い使うことなんてなかったけど。



「つか、待ち伏せしてたって俺が来る保障すらなかったんちゃうん?」


「だってそんな気分だったんだもん。」


そう言ったあたしに彼は、大きくため息を吐き出した。


ジルに電話すれば出るということは、きっと捕まってはいないということ。


それだけわかれば良い。



「アイツも昔な、大雨に打たれて帰ってきたことあったわ。
んで、理由聞いたらそんな気分やったって言うだけねん。」


似てるなぁ、と彼は苦笑いを向けてくれる。



「ギンちゃんってあたしのこと嫌いなんだと思ってた。」


「嫌いやよ。
報われん恋してるヤツは、男も女もみんな嫌いや。」


「それって自分もだから?」


「秘密や、アホ。」


報われない恋、か。


また先ほどのことを思い出し、あたしも雨空を見上げた。


いつもならそろそろ日の昇る時間だと言うのに、その気配は見られない。