“いつものカラオケ屋”とは、拓真とよく来ていたところ。


24時間営業で、明け方も近いこんな時間でも、変わらず営業している場所だった。


部屋に入り、メールを送って歌うこともなくソファーにうな垂れていると、それから小一時間ほどで扉が開いた。



「ごめんね、遅くなって。」


拓真、と思わず呟いてしまう。


少し安堵して体を起こすと、彼は煙草を咥え、あたしの隣に腰を降ろす。



「こんなところにあたしを呼んでどうするつもり?
あ、エッチなことでもするんでしょー?」


少しおどけて笑うと、彼は困ったように煙を吐き出した。



「アイズ、大変らしいじゃん。」


あのまま店であたしを飲ませていても、まともに話も出来ないと考えたのだろう。


そんなことか、とため息を混じらせた。



「あたし今、そんな話したくない。」


薄暗い部屋に、テレビの画面からはリクエスト曲が小さく流れていた。


つんとして視線を逸らすと、「レナが心配。」と彼は言う。



「俺ならレナの気持ち、一番わかってあげられるよ。」


彼の言わんとしていることはもう、わかっていた。


例えあたしが逃げるために拓真を選んだとしても、彼はきっとそれでも良いと言うだろう。